酒と本
2017/12/29
 
装丁の仕事を生業にしていると、酒と本って似てるなと思う。
あってもなくても生きていけるのに、時には人生に希望を与え、時には人生を台無しにする。
さらに本のカバーデザインと酒瓶のラベルデザインも共通するものがある。
両方ともに中身が良ければ外見のデザインはタイトルやら酒名がわかればどうでもいいはずなのに
一冊一冊、そして一本一本になんとも工夫を凝らしたものが出回っていることか。
リビングの大きい本棚に、箔押しで煌びやかに並んだ書籍を見ると、
これ以上知的なインテリアはないな、と思うし、
小洒落たバーや居酒屋で、ワイン、ウイスキー、日本酒、焼酎の整列を見るにつけ、
良き空間を醸し出しているなと思う。
近年は伝統的な日本酒、ワイン、ウイスキーより
焼酎、梅酒の新商品に新しいデザインが百花繚乱の美を競っているようだ。
そこでの金箔の自己主張は強力だ。それは、中身の酒をよりうまそうに引きたてる。
時々、我が装丁のヒントにもなっている。
以前、箔押しの印刷会社に見学にいったとき、
書籍の箔押しの隣で、焼酎の凝ったラベルが大量に金箔押しされていた。
これから箔押しの生き残る道は書籍よりラベルやパッケージなのだろうなと痛感した瞬間だ。
というのは原価的に書籍に箔を押せる贅沢な書籍はなかなか難しい時代になってきている。
そしてこれからの時代、電子で読める書籍には箔押しは不要になる。
本にとって寂しい時代はすぐそこだ。
その点、酒を電子化は出来ないし、たしなむことが禁止されることも未来永劫ないだろう。
酒の種類だけデザインが存在していくのは羨ましい世界だ。
こんなことを考えつつも、素敵な酒瓶をグラスに傾けながら、
ちびちび、これからも本を作っていこうと思う……。